中華飯店桜宝軒 らーめん 680円

22
10

「大将!らーめんね。」
夕刊を手に取り、汚れたトレンチを脱ぐ。
殺人現場から犯人が逃走と見出しが報じている。
警察は厳戒態勢、現場はかなり近い。

「物騒だね…。」

店内は奥の席にコートの男が一人とカウンターに馴染みの源さんだけ。源さんは赤黒い手を震わせ冷酒を舐めていた。

「源さん、景気はどうよ?」
返答がない。源さんはチラチラとコートの客を気にして、冷酒を持つ手が一層震えてる。
「は、話しかけないでくれ…」
明らかに源さんの様子がおかしい。

【犯人はコートの男】新聞の文字が浮かぶ。

「…お待ち。」
ゴツゴツした手がらーめんを目の前に置いた。
丼から湯気が立ち上がる。

「お話聞かせてもらえます?」
背中に警察手帳を見せながらコートの男が立っていた。
「これ、食ってからでもいいかい?」
割り箸で麺を啜る。温かいこの味。安心する味だ。
お絞りで顔を拭く。

見るとべったり血がついた。
ミステリー・推理
公開:21/02/22 23:26
更新:21/02/22 23:33
中華飯店桜宝軒③ 来る者は拒まない店

空津 歩( 東京在住 )

空津 歩です。

ずいぶんお留守にしてました。

ひさびさに描いていきたいです!


Twitterアカウント(告知&問い合わせ)
https://twitter.com/Karatsu_a

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容