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夜の路地裏から悪臭がしたら、近寄ってはいけない。
湿度の高いこの街では有名な話だ。
いけない。駄目だ。そう言われると、余計に行きたくなるのは人間の悲しい性。この先に何があるのかは知っている。それでも、足が勝手に動く。
路地裏を進む。濃くなる悪臭。角を曲がる。羽音。足を止める。
やはり。
三方を壁に囲まれた空間に血塗れの死体が積み重なっていた。老若男女問わず、新しそうなものから腐ってどろどろになったものまで。
何度も見てきた光景。でも、止められない。初めて見た時は吐いたが、もう大丈夫。気が付いたら、この気持ち悪さが病み付きになっていた。
首から下げたカメラに触れる。
かしゃ、かしゃ、かしゃ。
無意識に写真を撮り始めていた。おかしいのは分かってる。死体の山も自分がしていることも。
ただ、自分がこの山に加わる心配はない。まだ夜じゃなくて、朝だから。
だから、大丈夫なんだ。
ホラー
公開:21/02/22 22:24

湿度文学。( 湿気の街 )

湿度の高い街に住む、救われたい住人の日常。

Twitterでも「湿気の街」について文章を書いたり、写真を上げたりしています。→湿度文学。( https://bit.ly/3bGzTe0

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