出られた頃な。

妹が結婚するという。
ネットで知り合ったのでは無いと。
「外の人に会う機会なんて、無いだろ？」
と言ったら、
なんと地震の停電のあとに電気点検に来た、あのイケメン兄ちゃんだと。
私が名刺なんか貰ったのがいけなかった。
うち中の配線を点検するというので、家族で家の中を逃げ惑ったのだ。
考えてみれば、妹にとっては、外の生身の人間を見る機会は、滅多に無い訳だ。
「立派な電気配線のご家庭で。」とか言うやからに、妹を嫁がせて良いものか？
「ちゃんとした配線のアパートを借りました。」とか、お前の頭には、電気配線しか、無いんか？
「お兄ちゃんは、生身の女性なんか、好きになった事なんか、無いわよね？」
余計なお世話だ。
そういえば僕にだって、学校時代、好きなこがいたなあ。
思い出せば、まだマスク無しで、外に出られた頃な。