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「私と結婚したいなら唯一無二の花束と宝石を持って来なさい」
村一番の美人である彼女はそう言った。その一声は都にまで響き渡る。
連日、昼夜問わず彼女のもとには花束と宝石を抱えた男達がやって来る。
「珍しい花で束を作ったくらいじゃ唯一無二とは言えないわ。宝石だって大きいだけじゃない。出直してきて」
彼女は厳しかった。相手が誰であっても妥協しない。
だが、同時に彼女を見た男達も落胆もする。
美人薄命。美しいがどう見ても長生きできる体ではない。あれでは世継ぎも難しかろう…皆が早々に彼女に見切りをつけた。
寒い冬の日、僕は彼女のもとを訪れる。
手には何も持っていない。訝しむ彼女の目の前で手を叩く。雪が降り始めた。
「雪の結晶…唯一無二の花束だわ」
も一つ手を叩けば雪は細氷へと変わる。
「ダイヤモンドダスト…美しい宝石ね」
彼女は恐れる事なく冬の妖精である僕の妻となった。
怪談噺の花形、雪女となった。
公開:21/02/20 21:01

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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