夥しき襤褸

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武蔵野の面影を残す鬱蒼とした林のなかに灰色の洋館が見えた。錆びて開いたままの門を抜けるとピアノが聞こえた。モーツァルトだ。モーツァルトしか知らないから決めつけたまでだが。玄関の扉は聞いていた通り施錠されていない。押すとエントランス。片隅にピアノが鳴っている。プレイヤーがリピートしたままだ。書類にプレイヤーをチェックして隣のパントリーに入る。テーブルにワインボトル。ラベルは読めないが年代物で高そうだ。書類のリストに赤ワイン二十本と記入する。
リビングルームに入る。二階まで吹き抜け、四十畳くらいの広い部屋の中央に古着、ぼろ切れの山。色とりどりの古着、古布が天井に届くほどに積まれて部屋を占領している。円い古墳のような古着の山。どこかの写真で見た現代アートみたいだ。カビの臭いが漂う。
軽トラックでは無理だろう。廃棄物処理依頼書に記入しながら俺はそう思った。モーツアルトが鳴っている。
その他
公開:21/02/20 14:40

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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