野良人

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「最近、野良が増えて困ってるんです」
 町内会で野良猫の話をしているのではない。ここは地域の交番で、話を聞いているのはもちろん警官だ。
「野良は近頃多くて、手を焼いています。警察でも手を尽くしていますが、今のところ私有地の中にいるのでも無いかぎりは強制的に収容するとか移動させることはしていませんから……」
「そんなことじゃ、こまるわねえ。歩いていて怖いもの……」
「全力を尽くします」
 警官はそう言って話に区切りを付けようと、相手の主婦らしい女性に軽く敬礼をした。女性は、しかたなしと思ったのか引き下がって、サッシの滑り戸を開けて外に出た。 
 各社社会は進み、体内埋め込みチップを使った役所のシステムで確認できる者のみが住民として扱われ、それがない人間は正式には情報未登録者。通称「野良人」(のらにん)と呼ばれ扱われた。
「野良人は野良猫のような可愛げが無いから、猫以下」という認識が大半だ。
その他
公開:21/02/20 13:31
更新:21/02/20 13:31

N(えぬ)( 横浜市 )

読んでいただきありがとうございます。(・ω・)/
ここに投稿する以外にも、自分のブログに同時掲載しているときがあります。

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