「カリフラワー」その3(偽書『名前も知らない花』・全4回)

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「いらっしゃい」
雑貨屋に入った青年を迎えたのは、いかつい顔のおっさんだった。
「え、誰!?」
「俺ぁ店長だが」
「あれ、花純さんは」
「花純ちゃん? あの子ならとっくに辞めちまったぞ」
「へ?」
「なんだ兄ちゃん知り合いか? その花束は?」
「これは、来る途中の花屋で……」
言いかけて、青年はハッとした。
それを見た店長は察したように笑い出した。
「はっはっは。そうか、兄ちゃん紗枝ちゃんに一杯食わされたってわけか」
「そんなぁ……」
青年はガクリと肩を落とすと、持っていた花束をすっと差し出した。
「よかったら、このお店に飾ってください」
「いいのかい」
「はい。ぜひ」
「そうかい、ならありがたくもらっておくよ」
店を出ようとする青年に、店長が声をかけた。
「よかったら名前教えてくれねえか。機会があったら花純ちゃんに伝えておくからよ」
青年は足を止めて振り返った。
「木下といいます」
その他
公開:21/02/21 19:06
NORIHISAさん 『名前も知らない花』 水素カフェさん 木下君シリーズ より 店長と木下君

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