栄光の左遷

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役立たずが左遷されるのは、時代に関わらずあることだ。
あるお寺の青年の坊主が、僧侶失格の烙印を押されて左遷された。青年僧は泣きながら寺を後にした。
左遷されるのは人間界だけでなく、動物界や妖怪界でも同じだ。
餌を取るのが下手な猿が、森から追い出された。いっこうに太らない豚は厩舎から放逐された。人を驚かすのが苦手なカッパは川から蹴りだされた。
左遷された1人と3匹は、それとなく集まった。
人間が3匹に提案する。
「左遷されたおれたちだから、いっそうのこと徹底的に左へ向かおうじゃないか。あの山を越えて、さらに向こうへ」
「あの山には怪物がいるという噂だが」
腰が引けたカッパを、猿が叱り飛ばす。
「いいじゃねえか、行ってみれば。なあ、ブタさんよう」
「まあ、食うものがあれば、ブヒブヒ」
こうして彼らは、西へと向かった。
彼らの冒険は西遊記となり、いまでは誰もが知る物語になっている。
ファンタジー
公開:21/02/21 08:41

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