少女と人形

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「お母さんなんかだいっきらい!!」

そんな泣き声と共に、小さな女の子が部屋に飛び込んできた。そして、ベッドの上に座っている私を抱き抱えた。
「ひく、ぅ、聞いてミーちゃん!お、お母さん、また私を怒ったの!」
大粒の涙を零しながら、女の子は泣きじゃくる。部屋の外からは、女の子のお母さんが女の子の名前を呼んでいる。
「お母さんは私が嫌いなんだぁぁぁ…」
私の身体を強く抱き締めて、女の子は一層泣きじゃくる。

そんなことないのよ。
ねぇ、お母さんが怒るのは、貴女を大切に思っているからなのよ。
貴女が大事だから、危ないことをして欲しくないし、しっかり勉強して、立派な大人になってほしいのよ。
ただ可愛がられるだけの私と違うのよ。
みんな貴女を愛してるから、貴女を心を込めて叱るのよ。

そう言ってあげたいのだけど。私は所詮お人形さんだから。
彼女から零れる涙を、私は受け止めることしかできないの。
その他
公開:21/02/17 09:18

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