10
7

さざ波と風の音。
目を開くと穏やかな青空が広がっていた。白い雲はほとんど動くことがなく陽の光をいい塩梅に遮っている。

ゆっくりと上体を起こす。新緑の草が気持ちよさそうに海風に揺れている。眼前には島の全景が広がっていた。遠洋は深いブルー、浅瀬はエメラルド・グリーン。まるでハワイだ。

「そのとおり」
いつの間にか隣には女性が立っている。背後の崖の先端方向を見やっているので、見上げても短な後ろ髪が見えるだけだ。

僕は背中の後方に手を付き、ぐいっと体を反らせた。彼女の顔を覗こうと思って。意表を突くタイミングで、女はこちらを振り向いた。元カノだ。あれから何年が立つ?

「夢みたいだ」
「そうね」

子供たちを寝かしつけながら、4Kの風景動画を眺めていたのだが、寝落ちしたらしい。どうりで景色が美し過ぎると思った。

「ずっと居てもいいのよ」
僕は笑って目を瞑り、首を振った。

暖かい風が吹く。
その他
公開:21/02/17 23:15

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容