入荷メール

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手に入れたいモノがあった。通販ショップで入荷する度、タッチの差で売り切れてしまう。再入荷を知らせるメールを登録するのもこれで三度目だ。
朝食代わりに飲むヨーグルトドリンクをコップに注ごうとしたが、パックは重いのに中身が出てこない。間違って牛乳寒天を買ってしまったらしい。皿に滑り出た寒天に色とりどりの玉が散りばめられている。悪戯好きな姪が冷蔵庫に仕込んでいったならビー玉か。スプーンでビー玉をえぐり取りながら寒天を食べてみる。不味くはない。
着信音が鳴り、慌ててパソコンに飛び付く。商品のページを開くと売り切れになっていた。腹が立ち、思わずマウスを寒天に投げつける。衝撃でビー玉が飛び出して一つが額に直撃した。痛みでうずくまる私の背中に、「また勝った!」と携帯電話を手に仁王立ちの姪が叫ぶ。お前だったのか!
「おじさん、売ってあげようか」
アレをちらつかせた。
その他
公開:21/02/17 22:01
モノはお好きな物を 再入荷メール

射谷 友里

射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。

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