往復書簡 水素カフェさん作品『名前も知らない花』

14
7

男はあれから仕事帰りにあの雑貨屋に通い続けた。
名前も知らない一輪の花を抱えて。
しかし、女性店員とは客として初めて僅かな言葉を交わしたあの日以来ずっと会えなかった。
今日も彼女はいなかった。
店頭で立ち尽くしていると、中で掃除していた店長が店の奥に向かって一際大きな声で話しかける。
「母さん。花純ちゃん元気かな?」
奥さんの声はここまで届かないが、店長には聴こえている様子でやりとりは続く。
「看護師の試験に受かったから、うちのバイトは卒業しちゃったけど、本当にいい子だったな。今頃は町立病院で頑張ってんだろな」
客の男は店を出て町立病院の方へ走りだした。
「行ったか。花純ちゃんもずっと野郎のこと見てたからな。野郎がやっと来たのがあの子のバイト最終日。ロクに話もできない奥手な2人だけど、今日のあの勢いなら辿り着けるだろ。名前も知らない花だったのに、今は名前も咲いてる場所も知れたんだ。頼むぞ」
恋愛
公開:21/02/14 21:41
更新:21/02/14 21:44
水素カフェさん作品 名前も知らない花 勝手に1話目の続編を書きました 完全に男性目線の理想です(笑)

NORIHISA( 碧の星 )

   創作活動はこちらのショートショートガーデンが初めてです。令和元年12月31日から投稿開始しております。
 勉強になりますので、どのようなことでもお気軽にコメントいただけると嬉しいです。厳しいご意見もお待ちしております。
 どうかよろしくお願いいたします。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容