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今日のダンスパーティでもその人は誰とも踊らず、一人ワインを嗜んでいた。
美しい女性だ。男は皆、彼女にダンスを申し込む。
「ごめんなさい」
一言、あっさり断られる。
いつしか彼女に声をかける男性はいなくなった。

「踊らないのですか?」
夜は給仕の仕事をしている僕。彼女に尋ねた。
「あら?ダンスのお誘い?」
僕は首を横に振る。
「僕にダンスの経験はありません」
彼女は僕の手を取った。
「なら、教えてあげる。私の指示に従って」
耳元で囁かれ、真っ赤な顔で頷く。
それから数分間、僕は彼女の操り人形として踊らされた。

「今夜は楽しかったわ」
帰り際、彼女が僕に微笑んだ。
「あの…どうして僕と踊ってくれたんですか?」
「私、踊らされるのが嫌いなの。踊らせるのが好きなの。それに…」
悪戯っぽく笑った彼女は僕の耳元に顔を近づける。
「壁の花を手にするのは庭師の貴方にお願いするのが一番と思ったからよ」
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公開:21/02/14 20:39

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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