最期の1文

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手にした原稿の表紙にはこうあった。
「私は収集家だ。とある古書の最期の1文がどうしても解読できない。貴殿の才能でもって完成していただきたい」
表紙を捲った。
『気がつくと薄暗い部屋だった。徐々に襲われ拉致された記憶が蘇る。
部屋には簡素な机と椅子しか無く、原稿用紙の束と鉛筆が…』
そこには今自分が置かれている状況と全く同じ内容が記されてあった。
地下と思しき窓の無い部屋。扉は外側から施錠されている。
むしろ自分の方が原稿と同じ状況に置かれている…

ある本がベストセラーとなった。
監禁されこの本を完成させられた男の手記という内容で
実際に誰かを監禁したのではと話題になった。
特に結末の表現が賛否両論を巻き起こしたのである。
その結末のページは手で破かれたような装丁となっていた。
そしてあとがきにこう記される。
『絶命した男の胃袋から破かれた最終ページを取り出したが解読はできなかった』
ホラー
公開:21/02/16 15:15
更新:21/02/16 18:11

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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