イタリアン電話

携帯ショップに行くと、イタリアン電話なるものを勧められた。
スタイリッシュな形で、珍しくカラーは焦げ茶。
「これは濃い話ができるんですよ。っと言うか、濃い話しか出来ない。世間話はできません。おすすめは近しい人との通話。ご主人やお母さんとか、日頃は恥ずかしくて言えない濃い事もこの電話ならすんなり話せます」
勧められるまま、それにした。早速、母に電話してみる。
「お母さん、いつもありがとう。本当に感謝しているよ。私を生んでくれた時は難産だったんだよね。苦しんで生んでくれてありがとう。今あるのはお母さんのおかげ…」
その後もいつもは話せない濃い話がすらすら出てきた。
最初は訝しく思っていた母も、途中から涙声になり「ありがとう。」と言ってくれた。

「あっ、言っておくけど、生前贈与して欲しい物があるの。父さんからのあの大きなダイヤモンドの指輪。弟の嫁には渡さないでね」

…後味もイタリアンらしい。