神様の恋愛成就

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「どうか、沼田くんと恋人になれますように!」
いいなぁ。私も、恋愛してみたいなぁ。

お賽銭箱に小銭を入れて、必死に祈る女の子を見ながら、そう独りごちる。
もうどれぐらい長い間、縁結びの神としてここにいるのだろうか。人の波は常に絶えることは無く、今日もたくさんの人が私に願いを掛けにくる。
初めのうちは楽しい仕事だったけれど、段々と私も「恋愛」というものに興味を持ち始めた。想い人と結ばれたいと願う人、お付き合いや結婚が決まったと報告に来る人、時たまに、上手くいかなかったと泣きながら来る人。
恋をする人というものは、皆美しかった。
私は創られた時からここにいる。この場所で、人々の恋路の行く末を見守っている。それが私に与えられた役割だから。

「…神様。どうか、私も素敵な恋ができますように」

必死に祈る人の声を聞きながら、誰にも届かない、誰も聞き入れることのない己の願いを、虚しく響かせた。
恋愛
公開:21/02/16 12:12

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