侵略者

ロビーに呼び出されていくと四人が座っている。タワーマンションの自治会は参加者が少ない。五人で始まった。自治会長が声をひそめて「機密情報です。侵略者が来ています」一瞬何のことかわからなかった。「実はすでに侵略者が都市に入り込んでいます」「どこからの侵略者？」「情報がありません」「どんな奴らですか？」「彼らは狡猾です。人間のなかに入って乗っ取ります」「外見ではわからないのですか？」「そうです。侵略した人間を普通に行動させて、あるとき一挙にこの都市を征服する戦略です」「区別はつかないのですか？」「奴らは乗っ取った人間にチップを入れます。縫合した三センチの傷跡が侵略された証拠です」「チップは腕とか首筋とかに？」「それもわかりません」
散会してロビーを出た。部屋に戻ると妻が「自治会はどうだった」とお茶を入れた。テーブルに座って妻の顔を見た。変わった様子はない。妻の身体を調べる必要があると俺は思った。