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僕はため息をついた。最近ため息ばかりついている。でもそれも今日で終わる。

「なにか御用ですか?」
「はあ? あなたこそ」

僕は赤面した。止めに来たわけではないのか。
少し離れた場所で、女は生気のない顔をして崖下をぼんやりと見つめていた。

僕が同じようにして遥か下方の濁流を眺め見ていると、彼女が言った。
「飛ぶならさっさと飛んでよ。気が散るわ」
僕は首を振った。
「あなたはどうして……、死ぬんですか?」
口にするとどうにも滑稽な言葉に聴こえた。
彼女はばらばらになった昆虫の屍でも見るような目で僕を見た。

「これから死ぬ人間相手に話して何の意味があるのよ」
どこかで聴いたことのあるセリフだ。段々とやる気が失せてきた。

僕は徐に社会の窓を開け放ち、雄大な景色を前に放尿した。

「信じられない」
「これから死ぬ人間相手に気を使う必要もないでしょ」


彼女とはいまでも、ときどき話をする。
その他
公開:21/02/13 23:00
更新:21/02/13 22:34

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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