Kiss me

２０%だった私のバッテリーが彼とキスをしただけで５３%になった。１００%にしたいけど、彼は台所でパスタをつくるからといって、私を本棚の上に残し、ぶら下がっていた天井を離れた。
「タラコってある？」
彼は机の引き出しを開けながらそんなことを言う。
「いぶりがっこならあるけど」
「それは魚卵じゃないでしょ」
と彼がトイレのドアに手をかけようとするから「そこも違うよ」と指摘すると、彼は不思議そうな顔で、私のほうが不思議な気持ちになる。
「カマキリの卵なら冷凍庫にあるけど」
それで彼は湯を沸かしはじめた。
「スパゲッティは？」
「靴箱の中」
玄関に向かう彼を見下ろしながら私はバッテリーの激減を感じる。
スパゲッティとスパゲティではどちらが正しいのだろう。
彼はすぐに激減する私に「いつも細かいことを気にしすぎなんだよ長宗我部は」という。
また彼は私と長宗我部を間違えた。
それで私は本棚の上で黙った。