ミクロ宇宙

0
2

N氏の研究室を訪れたS氏はカーテンを開けた。
「宇宙を研究するのに望遠鏡じゃなく顕微鏡を覗くなんて君ぐらいなもんだ」
「新しい惑星を発見したんだってね。君は天文学界のスターだよ」覗いたままN氏は応える。
「宇宙に背を向けて宇宙を語ろうというのかい?」
N氏は顔を起こした。
「私は真正面から向き合っているよ。宇宙が外へ広がり続けると言うなら、その逆も存在するはずだ」
促されるままにS氏は顕微鏡を覗き込んだ。
「ミクロ宇宙とでも言うのかい」
「私も見つけたよ」
「何だこれは…。銀河じゃないか」S氏は固唾をのんだ。
「私の細胞の中に広がる宇宙だ。もちろん君の中にも同様の宇宙が存在すると確信している」
「そんな…」
「知的生命体も存在すると信じている。更に言えばマクロ宇宙とミクロ宇宙は繋がっているんだ」

「馬鹿な。すると我々がいるこの宇宙も単一生物の内側の世界という事なのか…」
S氏は天を仰ぐ。
SF
公開:21/04/19 09:35
更新:21/04/28 12:42

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容