だから言ったのに

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『いい、会社の受付は会社の顔よ。いつも見られている事を意識しなさい』
先輩の言葉を聞き流す。そんな事言われなくても分かっている。
私はこの美貌で、この一流企業に勤めるエリートのいい男を捕まえるって決めているんだから。いつだって美しく、どんな男でも振り向くような笑顔、それを意識しているわ。
それなのに先輩ったら毎日同じことを繰り返して…まさかもうボケているんじゃないかしら?なら引退したらどうですか~。なんて、おくびにも出さず心の中でバカにする。今は目の前のお客様に集中する。
「ん?君は確か…」
お客様が私の顔を見てハッとする。もしかして、美しさに見とれちゃってる?
「先日、コンビニの店員さんに口汚い言葉を浴びせかけていたね」
…えっ?
「マスクもしていなかったから覚えているよ」
お客様は顔を顰めると帰ってしまった。
『あのお客様、ウチの上得意様よ!だから言ったのに!』
私の顔にひびが入った。
公開:21/04/18 21:11

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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