ドウジョウするなら金をくれ

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少女は横に座るぼくに、こう言い放った。窓の外をみると、雨脚が強くなりつつあった。
「ドウジョウするなら金をくれ」
彼女は子役のスターだった。あるドラマで大人気になったものの、それは一瞬だった。
軽い遊びのつもりで煙草をくわえた瞬間を隠しカメラで撮影され、その映像がSNSで出回ってしまったのだ。
彼女イメージは失墜し、いまや女優業としては開店休業状態だった。
「そんな、金、金ばかりいうと、さらにイメージが落ちるよ」
ひるむぼくを、彼女は睨みつける。女優としての視線だった。
「大人としてそんなの常識です」
「そんなに言うなら分かったよ」
しかたなく、ぼくは駅前までのタクシー代を半分支払った。
青春
公開:21/04/18 16:11

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