身の程を知る

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籠の中で暮らす私に、野生の彼は、外で自由に生きることの素晴らしさを語ってくれた。
「好きな時に食べて、好きな時に寝て、好きな場所へ行ける」
逆に、私は彼に、人と暮らすことの素晴らしさを語ってあげた。
「安全な家の中で、毎日お腹いっぱい食べられて、可愛がってもらえる」

そんな日々が続き、私も彼もお互いの生き方に興味を持った。偶然にも私達は同じような見た目をしていたので、ある日、こっそり入れ替わった。
私は野良猫として外に、彼は飼い猫として籠の中に。

「悪くないわね」
そういえば行ってみたい場所があったのよね。ルンルンと、鼻歌交じりに道路を渡る。

次の瞬間、大きな音と鈍い痛みが、身体中を襲った。

「こいつはいいや」
確かに悪くない。飯は美味いし、家の中は快適だ。でも、やっぱり物足りない。
「早く帰ってこないかな」



約束した時間になっても、飼い猫の彼女が戻ってくることは無かった。
その他
公開:21/04/20 11:11

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