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「いいカメラだ。飾っておくといい。」
質屋の老店主はカメラを俺に返す。「思い出もまた財産だ。」と。
ジジイの形見には値が付かなかった。思い出じゃパンは買えない。
錆びてシャッターが切れない時代遅れのガラクタに、やはり価値などないか。
舌打ちをする。遅れてため息が出た。
「ファインダーは万華鏡だ。覗くたび世界が違って見える。」
ジジイの言う通り、まだ疑いを知らぬ幼い頃、そこを覗けばキラキラした世界が見えた。
ガラクタが見せるのは、今じゃ濁った曇り空くらいだ。
ファインダーを覗く。
予想外の光景に俺は目を疑った。
穏やかな笑みの見知らぬ女が赤子を抱いている。傍ら、不貞腐れながらも照れた表情の男が佇む。
その男に何故か見覚えがある。
「まさか…」
妙な確信があった。馬鹿みたいな話だが、それはきっと未来の…
不意に指が触れ、乾いた音で切れないはずのシャッターが切れた。
質屋の老店主はカメラを俺に返す。「思い出もまた財産だ。」と。
ジジイの形見には値が付かなかった。思い出じゃパンは買えない。
錆びてシャッターが切れない時代遅れのガラクタに、やはり価値などないか。
舌打ちをする。遅れてため息が出た。
「ファインダーは万華鏡だ。覗くたび世界が違って見える。」
ジジイの言う通り、まだ疑いを知らぬ幼い頃、そこを覗けばキラキラした世界が見えた。
ガラクタが見せるのは、今じゃ濁った曇り空くらいだ。
ファインダーを覗く。
予想外の光景に俺は目を疑った。
穏やかな笑みの見知らぬ女が赤子を抱いている。傍ら、不貞腐れながらも照れた表情の男が佇む。
その男に何故か見覚えがある。
「まさか…」
妙な確信があった。馬鹿みたいな話だが、それはきっと未来の…
不意に指が触れ、乾いた音で切れないはずのシャッターが切れた。
ファンタジー
公開:21/04/19 19:46
更新:21/04/19 19:56
更新:21/04/19 19:56
壊れたカメラ シリーズ①
そのガラクタが見せる景色とは?
空津 歩です。
ずいぶんお留守にしてました。
ひさびさに描いていきたいです!
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https://twitter.com/Karatsu_a
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