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男がふとリサイクルショップの前を通りかかった。店先に小さな椅子が置いてある。普通の椅子。しかし、男は、どうしてもその椅子が欲しいと思った。インテリア家具には、興味のない男だったが、その椅子はだけはどうしても欲しいと思った。とりあえず値段を確認してみる。一万円。買えない額ではない。しかし、どう考えても座る自分の姿が浮かばない。飾る程のアンティークでもない。でも欲しい。男は思いきって買うことにした。ちょっとした衝動買い。たまには良いじゃないかと自分に言い聞かせ、意気揚々とその椅子を担いで家路を急ぐ。家に着くと早速、その椅子を何処に置こうか考える。悩んでいるうちに小一時間が経った。男は後悔していた。椅子などいらなかった。そう思い始めていた。すると今度はその椅子を一刻も早く捨てたい衝動に駆られる。さすがに不法投棄はできないので買った店へ持ち込む。すると店長が「あー、あなたもですか」そう言った。
ファンタジー
公開:21/04/19 18:03

ソフトサラダ( 埼玉 )

時折、頭をかすめる妄想のカケラを集めて、少しずつ短いお話を書いています。コメントは励みになります。

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