本当の自分に出会えた坂木さん

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「わーはっ…わーはっ…は」
演劇ワークショップに参加して三日目。
坂木さんは「笑う演技」に挑戦するため、自分の感情を解放する練習をしていた。
「坂木の笑い方って、なんだかロボットが人間の真似をしているみたいに見えるわ。本当に人間が心から笑っているようには見えない」
先生の厳しい指導が入った。
「でも、私は普段から感情を表に出すのが苦手で…自分でも自分の笑い方がよくわからないんです」
「それは違うわ。よく思い出して。貴女だって小さい頃には何かに無邪気に笑ったことがあるはずよ」
「そういえば…」
「ほら…」
坂木さんは、ぼうっと子供の頃を思い出し始めた。
「そうだ…クワガタを捕まえて、脚を一本ずつ引き抜いて、蟻の巣の入口に置いた時、私…」
「え?」
「あ、あの感じで笑えばいいんですね?」
「う…うん」
「あーひゃっひゃ!ひぃぃぃ!うひっひっく、ひゃははは!!」
こうして稀代の悪女役が誕生した。
その他
公開:21/04/17 11:51

水素カフェ( 東京 )

 

最近は小説以外にもお絵描きやゲームシナリオの執筆など創作の幅を広げており、相対的にSS投稿が遅くなっております。…スミマセン。
あれやこれやとやりたいことが多すぎて大変です…。

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