Ⅲ.弐章 参ト弐 3/3

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「だから、ガキは引き取りたくなかったんだ」
 苛立つ所長を他所に、スパイスは庭園を見渡す。
「どうしました?」
「すいません。不釣り合いな空間だと思って…」
「棄匣となる前の設備でしてね」
「前の?」
「医療設備も備わった介護施設です。前時代の価値観は理解に苦しみます。国民の義務も果たせない連中を手厚く看取るなど…」
「義務?」
「自国の構築した社会に従い貢献する。それが、知性ある者の正しい姿だと私は信じています。しかしここの連中は、国が提供する金と居場所が無ければ、碌に生きられない上、何かを生み出すこともない。家畜以下の存在だ」
「家畜…」
「そんな奴らを、同じ人間だとは思えませんね」
「…もし、何かの拍子で、その家畜の側になったら、どうしますか?」
「即刻死を選ぶでしょうな。もうよろしいですか?戻りましょう」
「…もう少し、ここを見てからでもよろしいですか?」
「構いませんよ。では…」
SF
公開:21/04/17 08:40
連載 SF 戦争 弾圧

Arujino( 東京都練馬区 )

まずは、こんにちは。

練馬区で活動中の、趣味の絵描きです。

小説・脚本なども執筆してます。

【番号なし】 用語・設定解説

【Ⅰ】 連載作品『WonDer BroS』 探偵と怪盗の対決が娯楽化した世界での物語。

【Ⅱ】 短編連作『Story Of Dri(P)Party』

【Ⅲ】 連載作品『根源悪の牧場』 戦争による差別と弾圧に支配された世界での物語。

【Ⅳ】 連載作品『ドライワンダーに遣う』

【001~】 短篇集『short TaleS』
 

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