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 神童も二十歳過ぎれば。そんな陰口までもが聞こえなくなるほどに衰えたわけではない。
 化粧筆をとらずとも自然にさしていた頬の桜色は、確かにどこぞへ散ってしまったけれど。
 私は指し続けている。プロの棋士だから。盤の前に座し、美しい棋譜を綴るために生きる棋士だから。
 新人の頃。タイトルへの最年少挑戦記録を更新した私に、未だ棋戦での優勝経験はない。
 下からは若い芽がつき出してくる。
 私の花弁は確かに散っているのだろう。
 いつもより少しだけ早く対局室に入った。着慣れぬ和装のためにと時間に余裕をもったからだろうか。
 久方ぶりの、タイトル挑戦の盤を目にする。
 私の花弁は確かに散っているのだろう。けれど、私はきっとソメイヨシノだ。寒々とした枝を晒しはしない。青々とした葉が茂る。
 艶やかに咲き誇ろうとはしない。ただ老いず、諦めず。どこまでも青く理想を掲げて、私は決戦の盤の前に根を下ろした。
その他
公開:21/04/17 01:43

ぴろしき

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 @yosisige

上記アカウントにて駄文を垂れ流しているインターネットポエム揚げパン。
にほんご、すき。

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