鳥ウム水(Torium水)

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突然変異で飼育している鳥の糞尿が猛毒化し、畜産業では深刻な社会問題となった。
猛毒な鳥の糞尿の元素名は「鳥ウム」と命名され、洗浄したあとに残った水は「鳥ウム水」と呼ばれた。
鳥ウム水を溜めるタンクは空き地にずらりと並び、次第に満杯になってきた。
そこで、政府は鳥ウム水を海洋放出することを決定した。
しかし、これには海洋汚濁を懸念した漁業者から猛反対が起こり、畜産業者との間でその賛否をめぐって一大論争となった。便乗するようにマスメディアも大騒ぎだ。
そのような中で、いよいよ鳥ウム水が海洋放出された。
数日後、海中には大量の魚が泳いでいた。
専門家が調査したところ、鳥ウムと海水に含まれる塩化ナトリウムが化学反応して、無害な固体の鳥ナトリウムに変わり、魚のエサとなったらしい。
こうして論争は収まり、鳥ウム水もすべて処理され、海も自然浄化されて元通りの綺麗な状態に戻り、立つ鳥跡を濁さず解決した。
その他
公開:21/04/18 07:01
トリチウム水 突然変異 糞尿 畜産業 元素 除染 海洋放出 海洋汚濁 漁業

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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