河童の川流れ

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出稼ぎに行ってみないか?

父に言われた。
何も難しいことはない。ただ、流れていればいいだけだ、と。

着いたのは三途の川。その流れに圧倒された。速い。ここを流れるのか?試しに足を踏み入れる。あっという間に水流にのまれ、突き出ている岩に衝突しそうになった。
「ギャアーーー!!」思わず叫び声をあげる。

その声を聞き、川を渡ろうとしていた人間が後ずさる。ひとり、ふたり。踵を返して陸に戻っていく。
「はい、お疲れ様。戻った人間は15人ね。じゃあ給料の15きゅうり。明日もよろしく」
きゅうりがしなびないよう、その日のうちにクール便で実家に送った。

1年後。三途の川の契約が終わった。
次の働き場所は回転ずしだった。俺は皿に乗せられ、レーンを流れた。楽しくてワハハワハハ笑いながら流れた。

1週間後、客が来なくなった。

「はい、お疲れ様。給料の700きゅうりね」

回転ずしに就職しようと思った。
その他
公開:21/04/17 19:36

いづみ( 東京 )

文章を書くのが大好きです。

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