ブティックで

住所を確かめてブティックに入った。店員に「会員です」と会員番号７桁を伝えると店員は俺をカウンターの後ろに案内し、俺の顔写真を撮った。そして上下のユニフォームを俺に渡すと「着替えてください」と試着室を指さした。試着室に入りドアを閉めると、なかに大きな鏡はなくオフィスに向かって開放されている。十人ほどが忙しくパソコンに向かって仕事中。上下を脱いでユニフォーム姿になった。着替える間、オフィスの誰も俺に注目しない。
試着室から出てミラーに自分のユニフォーム姿をみた。上下黄色のユニフォーム。横で店員が大きな浮き袋に空気を入れている。膨らむとそれは人の形になって、何と俺の顔をした等身大のゴム人形ではないか。「何のために？」と思わず口を荒げた。「一体ずつ作ります。会員が標的になった場合のリスク管理ですね」何のリスク？会員を辞めようかと思っていると店員は「脱会はできません」と静かにしかし強い口調で言った。