017.楽園

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 その町の中心には、一本の木があった。
 その木が枯れたのが、はじまりだった。

 あらゆる植物が生気を失い、土はヘドロの様にぬかるんだ。
 生き物は姿も消し、鳥の囀りも聞こえなくなった。
 空は鈍色の雲が覆い、冷たい雨が街をたたいた。
 
 そこにひとりの男が、中心の木の元へやって来た。
 次の日、中心の木は蘇り、活き活きと枝葉を伸ばしていた。

 町中の植物は萌え、土は肥えだした。
 鳥を始めとした生き物たちが戻り始め、命の気配があふれた。
 鉛のような雲は取り払われ、慰撫するかのように光が町を照らした。

 そこにまたひとりの男が現れ、中心の木へと向かった。
 次の日、中心の木は再び死んだように枯れていた。

 再び町から生気が消え、踏みしめる地面は淀んだ。
 再び気配はなくなり、不自然な静寂が街を包んだ。
 再び鈍い雲が訪れ、町をたたき始めた。

 その町は、あるべき姿へと戻った。
ファンタジー
公開:21/04/14 22:08
更新:21/04/22 07:40
楽園 自然 生物

Arujino( 東京都練馬区 )

まずは、こんにちは。

練馬区で活動中の、趣味の絵描きです。

小説・脚本なども執筆してます。

【番号なし】 用語・設定解説

【Ⅰ】 連載作品『WonDer BroS』 探偵と怪盗の対決が娯楽化した世界での物語。

【Ⅱ】 短編連作『Story Of Dri(P)Party』

【Ⅲ】 連載作品『根源悪の牧場』 戦争による差別と弾圧に支配された世界での物語。

【Ⅳ】 連載作品『ドライワンダーに遣う』

【001~】 短篇集『short TaleS』
 

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