白羽の矢

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「あのー。コレ変なんですけど…」
私は今しがたおみくじを引いた社務所に戻ってきた。
大吉や凶が印字されているはずの紙には
白羽の矢の絵のみが描かれてあった。
若い巫女は連れの有無を確認した後、奥にいた年配の女性職員に声をかけた。
女性はこちらを一瞥し更に奥へ消えて行った。瞬間だがひどく緊張した表情を見た。
少しして宮司らしき男性が出てきた。「ご案内致します」
予想外の展開に戸惑った。「あちらで説明致しますので」と気迫に押されて付いていく事になった。
社務所を抜け本堂の裏側の扉の前。
宮司は扉を開け入るように促す。目が慣れず真っ暗で何も見えない。
「当社は日本で唯一、人の生き神を祀っています」背後から宮司の声。
ある言葉が引っかかった。
「人の生き神?い、今もですか?」
「はい。いや正確には今はいません。先週役目を全うされました」
静かに扉の鍵が閉まる音がした。

白羽の矢…そんな馬鹿な…
ホラー
公開:21/04/16 14:16

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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