就活戦争

「就活は戦争だ」

大学講師の言葉だ。俺の志望した企業は面接での取り繕った態度より普段の何気ない人柄を見る為、旅行者になりすまして就活生に道を聞いたり、はたまた清掃員に紛れ込んで探りを入れたりとその手法は多岐に至るらしい。

万全の対策を練った俺に死角は無い！予想通り、旅行者に道を聞かれたが無難に対処した。清掃員とのやり取りも「心地良い清掃ありがとうございます」と先手を打って切り抜けた。

ここからは俺のターンだ。面接の待合い室に着くと用意した付け髭を鼻下に貼り付け、周りの就活生に「いい面構えだ。合格じゃ。帰ってよいぞ」と言い渡していった。ほくほく顔で帰っていく他の就活生を他所に俺は単独で面接会場へと乗り込んだ。

「残ったのは君1人かね？」

「はい」

「合格じゃ、帰ってよいぞ」









あの時、面接官の髭が少しズレている事に違和感を覚えていれば……。

就活は戦争だ……。