だから言ったのに

0
2

夜、囲炉裏の前で暖を取りながら酒をちびちび飲んでいると、こんこん、と戸を叩く音がした。
戸を開けてみるとそこには美しい女がいた。
外は酷い吹雪。今夜泊めてくれと言う女を俺は快く受け入れた。
泊めてくれた礼にと女は俺の世話を焼いてくれた。吹雪が止まぬ数日間、俺に尽くした。
女は家にあったいらぬ布で織物まで作ってくれた。素晴らしい出来だ。ますます俺は女が気に入った。
だがその女、織物をしている間は部屋を覗くなと言う。そう言われれば覗きたくなるのが人だ。俺はそっと覗き、女の正体を見た。
その女は蜘蛛だった。俺が気まぐれに助けた蜘蛛が恩返しに来たのだ。
だから言ったのに…と言い残し、正体を知られた女は消え去った…惜しい事をしたものだ。
俺は女が残したたった一つの織物を羽織り、家主を殺して手に入れた家を出た。あの女とまた会いたいと思いながら。
その願いは叶った。俺、犍陀多は地獄であの蜘蛛と再会した。
ファンタジー
公開:21/04/13 20:45

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容