弱塩酸かけ流して

レナは深夜に帰ってきた。身体には錆の臭い。すぐに弱塩酸液で洗ってやった。弱塩酸をかけ流して錆と汚れを落としてやる。そして酸化防止剤をいくらでもかけてやった。腰に打痕がある。「どうした？」「分岐管でちょっとやりあった」レナは多くを語らない。おそらく深い配水管の弁から水の流れを作ったのだろう。それに三日かかった。
レナはベッドですぐに眠った。
ロボットに睡眠は不要だと昔は思われていた。エネルギー補充、データ整理と破棄、各部位の調整には睡眠が必要だ。レナはぐっすりと眠っている。
レナは水を確保するためにどれだけ地中深く潜ったのか。あの世界の争いから、俺たちは水も食料も自分で得なければならない。
翌朝、レナは何もなかった顔で朝食を作り、出かける準備をする。休んだらと言ったが「今日は深い地熱配管から熱エネルギーをとってくる」とマンホールを素早く降りていった。俺はレナの身を案じて部屋にこもるしかない。