宇宙の広さは

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宇宙探査機「森羅」の世紀の発見は目前に迫っていた。
開発長のY氏は「宇宙の果て」に立ち会うべく家庭も顧みなかった。
「宇宙も我々の探究心、想像力の中では『見渡せる世界』と言える時代がそこまで来ています」と取材に答える。
「顔色が優れないようで…体調は大丈夫ですか?」と記者は心配した。
「単なる睡眠不足で」と嘘をついた。数日前から下腹部の鈍痛が常態化していた。
しかし今歩みを止める訳にはいかない。
記者が去ると部下が駆け寄ってきた。
「森羅が消息不明です!」
その瞬間下腹部に激痛が走り意識は途絶えた。

目覚めたら病院だった。
緊急手術した事、丸3日眠っていた事を妻が教えてくれた。
病室に駆けつけた医師は
「腸の腫瘍を摘出し顕微鏡で確認したら理解し難い物が写りまして」
見せられた顕微鏡写真を見て何故か笑いが出た。
「痛てて…参ったな。想像力が追いつかないや」
宇宙探査機ような腫瘍を眺める。
SF
公開:21/04/13 15:50

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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