折り紙の紙芝居

紙芝居屋がやってきた。昔ながらの自転車姿だ。しかしその紙芝居は精巧で不思議な折紙によるもので、子供達に大人気だ。

物語は空っぽの舞台枠から始まる。真っ白な紙が何枚も出てくるのを子供達は知っている。
一枚の紙から始まり、次第に色づく紙が自らを折っていく。紙は自らを複雑に折り続け、登場人物や背景になっていく。
その見事さに子供達は声もなく真剣に見入っている。

演目は王子が魔物と戦う物語だ。子供達は、小さくとも迫力ある動きを固唾をのんで見守った。
ついに王子が魔物を倒し王国に平和が戻った。
折紙たちは逆回しのように広がっていき、真っ白な紙になって終わる。
大きな拍手が起こった。

紙芝居屋は舞台の箱をたたみ、名残惜しげな子供達を後に去っていった。
この時可愛い女の子が一人いなくなっているのに誰も気づかなかった。

翌日、次の町で紙芝居が行われた。物語は昨日と同じだがお姫様が一人増えていた。