電木

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産学連携による森林科学技術組合がバイオテクノロジーを駆使し、電気と樹木を掛け合わせた「電木」を開発した。
電木の葉が光合成によって電気を発生し、電木の枝や根が電気を運ぶ。
電木の見た目は普通の樹木だから景観上も申し分なく、無電柱化の代わりに既存の電柱や電線は電木に置き換えられ、街路樹も電木に植え替えられ、電木が街の明かりを灯した。
電木の樹液は、電気の液体燃料として利用でき、エコロジーな自然エネルギーとして、街を走る路面電車や電動バス、電気自動車などの交通機関に使われた。
暴風雨によって電木が倒れた際、漏電や感電による事故が頻発したため、電木に防水加工の特殊な保護シートが施された。
ある年、電木が伝染病に罹った。電木の枝が絡み合いショートすることで電気が流れない「電線病」だった。街は停電し、電木医が派遣されて病の克服に努めた。
紆余曲折を経て街は電木に覆われた緑豊かな森林都市へと変貌した。
SF
公開:21/04/10 07:01
森林 バイオテクノロジー 電気 樹木 光合成 電柱 電線

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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