蒲鉾の桜(400文字)

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「なあ、蒲鉾の桜って知ってるか?」
突然の友人の話に、僕は興味深く耳を傾けた。
「知らん。何それ」
「桜ってな、満月の夜に1枚だけ蒲鉾になる花弁があるんだって。それがすっごく美味しいって話だ」
僕はごくりとのどを鳴らす。
「でもさ、たった1枚の花弁を見つけるのって無理じゃね。いくら蒲鉾でも」
僕の言葉に、友人はにやりと笑った。

「何が蒲鉾の桜だよ」
今日も残業で夜遅くなった帰り道、ふと立ち寄った公園で、僕は桜を見上げていた。
今夜は満月だ。
「はぁ」
毎日毎日夜遅くまで残業。失敗ばかりで上司には怒られてばかり。
もういい加減嫌になる。
あいつは今頃何してんだろうな。
ふいに、目の端に何かが映った。
「え?」
満開の桜の中で月明かりに浮かび上がるそれは、板の上に半円筒形に張り付いた、紛れもない蒲鉾だった。
「そっちかよ!」
思わず、ぷっと吹き出す。
空の上で、友人がにやりと笑った気がした。
その他
公開:21/04/08 21:58
蒲鉾の桜祭り と聞き及んだので 射谷 友里さん に続き 僭越ながら 参加させていただきます あれ?違う?

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