男色の桜(399文字)

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僕と友人は、満開の桜が咲き誇る公園へ遊びに来ていた。
「いや~、見事な桜だな~」
「ああ」と、隣を歩く友人も感嘆の声を漏らす。
すると、友人が躓いて前によろめいた。
「おっと」
僕はすかさず、友人を体ごと受け止める。
「大丈夫か」
「すまない」
友人は申し訳なさそうに僕を見上げた。
「……」「……」
「ちょっと待て」
友人からさっと離れる。
「何今の間は。桜じゃなくてバラの花が咲きそうな雰囲気だったんだけど」
「そうか?」
「気のせいか……あいたっ」
「どうした」
「目にゴミが入った」
「見せてみろ」
ゆっくりと、友人の顔が近づいてくる。
「……」「……」
「うおおいっ!」
「さっきからなんだよ」
「咲きかけたわ!」
「まあいいや、ここらでお茶にするか。生憎ワイングラスしかないけどいいよな」
友人は僕にグラスを渡すと、自分のグラスを高々と掲げた。
「ルネッサ~ンス!」
「男爵だよそれ!」
その他
公開:21/04/09 21:45

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