老婆と案山子

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農業にも機械化が進み、田んぼには案山子ロボが普及し一般化していた。
山村の奥の田んぼに毎日、案山子に話しかける独りの老婆の姿があった。その傍らには竹や藁と布で作成され、毎日綺麗に手入れされた案山子があった。案山子の顔には、へのへのもへじと書かれ田んぼに立てられていた。息子さんが亡くなってから老婆が手作りしたものだ。
「気持ちはわかるが、あんなものまだ使ってるよ。時代遅れだな」
そんなことを言っていた村人たちも、夫にも先立たれた老婆に、いつの頃からか、好きなようにすればええと放っておくようになった。
過疎化が進み、村には老婆独りとなった。案山子の頭には夫が被っていた麦わら帽子が。首には息子さんが巻いていた手拭いが巻いてある。老婆は今日も案山子に話しかける。
とある静かな朝。老婆の姿は田んぼに現れなかった。案山子に苔が現れた。
その他
公開:21/04/06 21:45
更新:21/05/09 21:45
老婆 案山子 かかし 田んぼ 童話 親子

前虎( https://mobile.twitter.com/mae10ra )

はじめまして。
前虎と申します。
作品を読んでいただけたら嬉しいです!
よろしくお願い致します。
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