ワンスプーンの空想

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ベランダの窓を開ける。
空気はスンと澄み春が寒さを塗り替えていくのを感じる事が出来る。
見慣れたはずの景色に違和感があった。
青のスープに生クリームを溶け込ませた様な空は綺麗だが
横断する鳥と思しき生き物は歪な丸いシルエットをしていた。
どの建物も、また窓や扉も角が取れたような緩やかな輪郭をしていた。
視界全体が霧がかっているような感じで近くでも遠くにあるような感じがした。
そうか、眠っている間に違う惑星に連れて来られたに違いない。
そして私にバレない様に景色を再構築したのだ。
まだ人類に及ばない文明なのだろうか所々にボロが出ている。
ハリボテの様な世界だが、何もかもに明瞭を求められる息苦しい日常に辟易していたので
これはこれで悪くないかもと感じた。
静かに目を閉じた。
気づかぬフリをしてこの世界で生きて行こうか…

ふぅと息を吐き、私は眼鏡をかけた。
眼下にはいつもの街並みが広がる。
その他
公開:21/04/06 10:00
更新:21/04/06 11:51

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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