難燃性塗料の想い

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会社を辞めて二ヶ月になる。鉱物資源の専門商社。世界中からあらゆる鉱物を調達して国内市場に卸す。社員は業績を争って世界中を駆け回る。業績を伸ばすために目新しい資源に目をつける。レアメタルはもう少しもレアではない。もっと付加価値の高い鉱物を探す。俺はなかでもやり手だった。チタンとかマグネシウムとか伸び代のある無名な鉱脈を見つけて採掘権を手に入れる。時間と金との競争だ。狙った鉱脈が当たれば大きな儲け。外すと成績に傷がつく。その繰り返し。俺が最後に手をつけた案件は、上司の反対を押し切って巨額を投じた結果、失敗に終わった。「自分が全責任を持ちます」と言った手前、後には引けなかった。俺は辞職した。
そして鄙びた漁師村の小屋に住む。小屋の外壁にペンキを塗った。退職時に失敬した売れ残りの難燃性塗料缶のペンキだ。塗料を塗りながら感慨にふけった。燃え尽きた俺に難燃性とは皮肉だ。もう一度火がつくだろうか。
その他
公開:21/04/08 09:52

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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