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久しぶりに休みが取れ、息子を連れて農業を営む実家に帰省した。
勿論、パソコンも持参だ。完全な休日など無い。一日中画面を見ていなくてはならないのだ。

「ふう…疲れる」
鞄から愛用の目薬を出そうとした時、息子がゴム風船を抱えて近づいてきた。
「あ、ごめんな。パパあと少しで休憩するから、それで投げっこして遊ぼうか」
「ううん、違う。爺ちゃんが目薬を借りたいんだって」
「爺ちゃんが?一日中田んぼにいるのに…目も疲れるのか…」
「これに使うんだって」
と、息子が手を差し出した時、ゴム風船がパチリと目を開けた。
「そうか。こいつも一日中、田んぼで鳥を見ていなくてはならないからな」
僕は、その赤くなった目玉に目薬を一滴さした。
ファンタジー
公開:21/04/07 22:47
更新:21/04/08 00:43

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