16.書管

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「閲覧許可は?」
「これだ」
 管理者が許可証の確認をする間、俺は室内を見渡した。金属の戸棚が立ち並ぶここは異様な圧迫感があり、慣れる事がなかった。
「被害者の方の書ですね。連帯同意欄が空白ですが?」
「天涯孤独。よくあるやつさ」
「なるほど。待っていてください」
 彼は迷いなく、お目当ての物を持ってきた。
「早いな。全部把握してるのか?」
「それができなければ、クビです」
 おそらく本当の事だろう。
 俺は少し息苦しさを感じながら、彼が出した一冊の本に手を伸ばした。
 ほろの書。
 創作者がのこした神秘の力であり、表紙に名を記した者の全ての記憶、記録が書き起こされる書物だ。
 今回のように身寄りの無い者が創ることが多い。
「大変そうだな。ここの仕事は」
 書物に目を通しながら、俺は何気なく尋ねた。
「大変でない仕事など、ありませんよ」
 彼はそう言いながら、光を失った目を向けて微笑んだ。
ファンタジー
公開:21/04/07 09:35
更新:21/04/07 09:41
ファンタジー サスペンス 記録 仕事

Arujino( 東京都練馬区 )

まずは、こんにちは。

練馬区で活動中の、趣味の絵描きです。

小説・脚本なども執筆してます。

【番号なし】 用語・設定解説

【Ⅰ】 連載作品『WonDer BroS』 探偵と怪盗の対決が娯楽化した世界での物語。

【Ⅱ】 短編連作『Story Of Dri(P)Party』

【Ⅲ】 連載作品『根源悪の牧場』 戦争による差別と弾圧に支配された世界での物語。

【Ⅳ】 連載作品『ドライワンダーに遣う』

【001~】 短篇集『short TaleS』
 

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