高層老後温泉

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高層ビルの一室。朝になると自然な照明で高齢者が目覚める。マリという名のロボットが優しく起こしてシャワーを浴びさせる。マリは朝食を用意する。朝食の次は散歩。室内歩行器で大スクリーンの新緑の道を歩く。高齢者はマリの手を取っていろいろ喋る。高齢者の過去のこと。マリには高齢者の全履歴データを入力済み。そして昼食、昼寝を済ませるとマリは風呂の準備をする。蛇口からは温泉の湯が出て、湯がたまると高齢者はマリと一緒に浴槽に浸かる。マリの柔肌が湯に光る。浴槽でまた昔のことを喋り、マリは高齢者の腕や脚を優しく揉む。浴室の窓からは高層ビルの群れに夕日が沈む。高齢者はいつも上機嫌だ。

このビルは企業用だったが、オフィス需要が激減したため改装する。ビル設計者は企画を練った。身寄りのない高齢者専用の個室にロボットを一台ずつ充当する。六十階のビルに千室作るとすれば初期費用と運用費用と入居者の費用はいくらになるか…。
その他
公開:21/04/07 09:24

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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