貯思い箱

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都会で一人暮らしをしている息子から宅配便が届いた。
ずっしりと重い箱。中を開けてみると貯金箱らしきものが入っていた。仕送りか?
ん?貯金箱じゃない?貯思い箱?何これ?
軽く振っても音はしない。とりあえず底についてある蓋を開けてみるか。
『誕生日おめでとう、母さん!』
中から息子の声がした。
『俺、一人暮らしをして初めて母さんのありがたみを知ったよ。今までわがままばっか言ってごめんな』
その言葉に思わず涙が出る。貯思い箱の中から出てくる言葉の数々に涙が止まらない。
『今度はこの思いをちゃんと口で伝えられるようにするから』
その言葉を最後に貯思い箱からは何も聞こえなくなった。
持ち上げてみると貯思い箱は凄く軽くなっていた。
そっか…これは思いを貯める箱なんだ…
私が投入口に『無理せず、元気でいてね』と告げると貯思い箱はずっしりと重くなった。
さて、私の手料理と一緒に貯思い箱を送り返してやるか。
公開:21/04/04 20:50

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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