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「ねえ、金色の桜って知ってる?」
話を持ち出したのは、中学生の私だった。
「桜ってね、満月の夜に一輪だけ金色になる花があるんだって。その花を身に付けると、幸せになれるって言われてるのよ」
「無理だって。桜一本に、いくつ咲くと思ってるの?」
馬鹿にした声で笑われ、怒って帰った放課後。校庭の桜はまだつぼみが固かった。
卒業式の前日、並んで帰るのは最後のはずだったのに。私は地元の高校へ、彼は県外の全寮制へ進学が決まっていた。
「まま!このさくら、光ってる!」
声を上げた娘が、つないだ手をほどいて駆け出す。
「すごーい!きんいろ」
「本当だ。綺麗ねぇ」
夕陽に染まった桜が、金色に輝いている。この子の入園式には桜吹雪が舞いそうだ。
「こら、走ると危ないぞ」
娘を掴まえて肩車する夫。最後のはずだったのに、またこうして並んで帰る。
そっと撫でたお守り袋で、卒業式にもらった金色の一輪が、コトンと鳴った。
話を持ち出したのは、中学生の私だった。
「桜ってね、満月の夜に一輪だけ金色になる花があるんだって。その花を身に付けると、幸せになれるって言われてるのよ」
「無理だって。桜一本に、いくつ咲くと思ってるの?」
馬鹿にした声で笑われ、怒って帰った放課後。校庭の桜はまだつぼみが固かった。
卒業式の前日、並んで帰るのは最後のはずだったのに。私は地元の高校へ、彼は県外の全寮制へ進学が決まっていた。
「まま!このさくら、光ってる!」
声を上げた娘が、つないだ手をほどいて駆け出す。
「すごーい!きんいろ」
「本当だ。綺麗ねぇ」
夕陽に染まった桜が、金色に輝いている。この子の入園式には桜吹雪が舞いそうだ。
「こら、走ると危ないぞ」
娘を掴まえて肩車する夫。最後のはずだったのに、またこうして並んで帰る。
そっと撫でたお守り袋で、卒業式にもらった金色の一輪が、コトンと鳴った。
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公開:21/04/04 20:33
秋田柴子さん『銀色の桜』より
金色の桜で別の話を書く。
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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