雛納めのお菓子

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我が家には、嫁が嫁入り道具にと
持参した雛人形がある。
そして今は孫のものであるが
「うちには置けないから
おばあちゃんの家に置いといて~」と
言われ仕方なく預かっている。

早く仕舞わないと婚期が遅れるなどと
言い伝えもあるけれど、齢70も過ぎて
今更と一人で笑う。

雛納めの前に、金平糖あられをお供えしてみた。
静かなこの家に、ひとときの華やぎを
与えてくれた雛人形にお礼を込めて。

縁側でお茶を頂きながら
空を仰ぐ、鳥は雲に入る。

そこへインターホンが鳴った。
宅配便のようだ。
重い腰を上げて玄関へ。
孫からの贈り物だった。
随分と気が利くようになって。

ゆっくりと雛の間に戻ると
湯のみには金平糖あられが
浮いていた。

春疾風でも吹いたのかしら。

雛壇を見るとそうでもないようで。
「あなたたちも、私に気を利かせて
くれたのね」私は、湯に浮いた星をそっと頂いた。
ファンタジー
公開:21/04/05 12:27

翡翠工房( 石川県 )

時の栞・翡翠工房(かわせみこうぼう)

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